写真は昨日の夕方5時に当館前で撮影したものです。一昨日の降り始めは湿った雪でしたが、昨日の朝から乾いた細かい雪に変わり、30センチ近くは積もったと思います。日中の気温も0度前後と、かなり寒い一日でした。
湯沢市皆瀬地区は秋田県内でも屈指の豪雪地帯。ここに暮らす人々にとっては日々の除雪や雪下ろしなど大変な季節がやってきましたが、東京で生まれ育った私は皆瀬の冬特有のキーンと透き通るような寒さと雪の匂いが好きです。
刈穂の酵母無添加仕込み純米酒が入荷いたしました。酒造りで最も重要なファクターであり、その蔵の「個性」だったり「持ち味」だったりが分かり易い形で味に現れるのが酒の仕込みに使用する「水」です。
例えば、福乃友酒造の仕込み水は近くを流れる雄物川の伏流水で、飲み口がやわらかい「軟水」の地下水を使用しています。福乃友の酒を飲んだときに感じる「やわらかさ」や「透明感」はこの軟水の仕込み水によるところが大きいと思います。
その福乃友から、わずか2キロほどの距離に位置する刈穂の仕込み水は、秋田県では珍しい「中硬水」。刈穂の酒質の特徴である「キレの良さ」や「どっしりとした深い味わい」は、やはりこの中硬水の仕込み水に秘密があるのだと思います。たかだか車で5分ほどの距離なのに、こんなに水の質が違うなんてなんだか不思議ですよね。
続いて、これも酒造りの重要なファクターの一つである「酵母」の話になりますが、通常、酒造りの過程において協会系酵母等の「清酒酵母」を添加し、酒を醸造するのが一般的となっています。お酒のラベルなどにも書いてある「酵母:協会○号」というのがこれにあたります。
酵母は5~8ミクロンくらいの大きさの微生物。目には見えませんが、蔵内の壁や柱、天井等、至る所にその蔵が持つ独自の酵母が生息しています。酵母は日本酒を造る以外にもワインや焼酎、パン、醤油、等々、醗酵を要する食品を製造する過程では必要不可欠なものですが、昔はどの酒蔵でも「蔵つき酵母」と呼ばれる酵母のみで酒を醸造していました。
しかし、蔵つき酵母だけでは酒質が安定せず、今年造った酒は良かったのに、次の年の酒は随分と変わってしまった…、ということも多々あったようです。酒を仕込んだら後は「神頼み」。昔の酒造りはこんな感じだったのかもしれません。
より良い酒を安定して造るため、現在では様々な種類の清酒酵母が市販されています。発酵力が強いタイプの酵母や、華やかな香りが出る酵母、大吟醸向きの酵母など、造りたい酒のイメージに合わせてこれらの酵母を添加するわけです。
ということで前置きが長くなりましたが、このお酒は清酒酵母を一切添加せず、刈穂の蔵に生息する酵母による自然発酵で醸造された純米酒です。先ほども書きましたが、刈穂の酒の特徴は、キレが良く、淡麗でスッキリしているけれど、どっしりとした重さがある、だいたいこんな雰囲気ではないかと思いますが、中硬水の仕込水+刈穂の蔵に住み着く酵母だけで造ったお酒だから、さぞかし「刈穂らしい」酒なんだろうと思いきや、これがまた意外とスッキリで軽めの味に仕上がっているのが不思議です。
刈穂が得意とする山廃仕込みの純米酒ですが「どっしり感」は少々控えめ。香りが良く軽めの口当たりなので、非常に飲みやすいお酒ではないかと思います。この機会にぜひご賞味下さい!。
刈穂 酵母無添加仕込み 山廃純米酒
原料米:秋田産美山錦
精米歩合:60%
日本酒度:+3
酸度:1.6
アミノ酸:1.2
アルコール度:16度
杜氏名:斎藤 泰幸
刈穂醸造元 秋田清酒株式会社
〒014-0801 秋田県大仙市戸地谷字天ケ沢83-1
TEL:0187-63-1224 / FAX:0187-66-2277
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