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今期2回目の福乃友です。小安峡温泉から福乃友酒造のある大仙市神宮寺までは車で約1時間半の距離。遠くに見える鳥海山は真っ白でさすがに冬らしい雰囲気はあるんですが、国道13号線沿いには雪が全くありません。県内でも有数の豪雪地帯なはずの湯沢市や小安峡温泉でさえも雪が全く無い状態。ここ数年はこんな感じで年末というのに雪が降らず、降っても続かないので積もらずに数日で消えてしまいます。除雪作業が無いというのは楽なのですが、ここまで雪が降らないとなんだか逆に落ち着きません。
そんなことを考えながら福乃友に到着すると、杜氏にあたる酒造責任者の古関さんは麹室で麹のチェック中とのこと。↑の写真を見る限りは酒造期にしてはなんだかガランとしていますが、すぐ側ではサイトウ君が翌日の仕込みの準備中。福乃友は4~5名の少数精鋭チームで酒を造っているので、県内大手の酒造メーカーと比較すれば圧倒的に人手も少ない訳なんですが、この人数で26本の仕込みをするというのですからびっくりです。 古関さんは私より年下で、サイトウ君は一回りぐらいは年下なんじゃないかと勝手に想像してますが、若いチームなのにあれだけ完成度の高い純米酒が造れるなんて凄いなあと思うと同時に、熱意のある若者に任せてみよう、応援してあげようという福乃友酒造の心意気もまた凄い。なかなかそう簡単にできるもんじゃありません。 先月の訪問時に麹室も見せていただきましたが、昨年まで使用していた製麹機(麹を造る機械)は撤去され、現在は普通酒~大吟醸まで全量を箱麹で手作りしているとのこと。多くの蔵では吟醸~大吟醸クラスの酒は箱麹で手作り、それ以外の酒は製麹機というのが一般的になっていますが、福乃友では機械を使わず麹は全て手作りで行われています。なぜ便利な機械を撤去して手作りに切り替えたのか?。以前、古関さんはこのように話してくれました。 「普通酒でも大吟醸でも全てが同じ「酒」であり大切な作品なのだから、全てに出来る限り心を込めたい」 私が福乃友という酒蔵に魅力を感じる最大の理由はここにあるのかもしれません。機械を使ったからダメなんてことはないと思うし、逆に手作り=良い物が作れるとも限りません。最も重要なのは作り手の「心」であり、自分が造る作品に対してどれだけに真摯に取り組むかが一番大切な部分なのではないかと思います。 麹君と対話中の古関さんを待つ間、勝手に釜場周りをジロジロと観察。ザルにお米が積まれているので明日の蒸しの準備かと思い近寄ってみると、お米ににしては粒が大きすぎるし、どう見ても丸いプラスチックの山。これはなんだべな…。 そこに腹筋が割れて酒屋男へと変身した古関さんが登場し「それはビーズなんです」。「はぁ、ビーズ…?」。詳しく聞いてみると、お米を蒸すときにこのビーズを甑の底に敷き詰めて蒸すと均一に蒸せるのだそうです。なるほど、だからビーズなんですね。 その後、古関さんに案内されたのがこの場所。奥のサーマルタンクには今期5番目に仕込が終わった酒こまちの大吟醸が。昨年は「酒に香りはいらん!」と宣言し、徹底して7号酵母の酒にこだわった古関さんですが、酒販店さんからは「もっと派手な酒じゃないと売りづらい」との声もあったそうです。 言われてみれば確かにそう思う部分も少なからずあるのが正直なところで、19BY純米酒の「ひやおろし」や「流(るう)」は香り控えめでスイスイ飲める食中酒としてはピカイチの酒なんですが、当館でもお客様にお酒を薦める際に、華やかな香りがあるお酒はどうしても1~2本は欲しいところ。そのあたりの声を受け止めての今期の大吟醸の造りとなったそうですが、イメージとしては福乃友の酒の中では華やかな香りの酒という印象だった改良信交の純米吟醸に華やかさ度+2ぐらいの酒があれば、今よりも更に幅が広がるんじゃないのかな、なんてことも思ったりしました。 いろんな酒を飲んでいる方なら分かると思いますが、吟醸香プンプンの酒ってありますよね。お米の味もしっかりと残っていてバランスの良い酒なら良いんですが、中には口にした瞬間にフワっと華やかな香りが広がるけれど、飲み込んでからはアルコール臭さだけが残って他には何も残らないっていうお酒もあります。こういうお酒は決して美味しいお酒じゃないと思うし、諄くて沢山は飲めたもんじゃありません。 やっぱり日頃から飲む酒というのは香りは控えめ、お米の旨味や甘みもしっかりあって、飲み口がやわらかい酒。ご飯を食べながら飲んでいて一番落ち着くのはやっぱり純米酒なんですよね。ここのところ毎晩のように福乃友の純米酒を飲みながら夕食を食べてます。「ひやおろし」と「流」の減りがやけに早いのは気のせいです。ごめんなさい。 こちらは今期4番目に仕込が終わった純米大吟醸。細かなスペックはあえて伏せておきますが、福乃友では地元の酒米しか使わないので当然ながら山田錦仕込みではありません。 20BY純米大吟醸の醪。古関さんが作る純米大吟醸、どんな味に仕上がるのか興味津々です。 ちなみに、酒造期の蔵の中は当然ですが暖房なんてありません。極寒の中、冷たい水でお米を手洗いし、数十キロというお米を担いだり、時には走り回る。ひとたび麹室へ入れば30度前後の真夏のような環境で麹を造る。考えただけでも体がおかしくなりそうな重労働。いやいや、蔵人というのは生半可な心臓では勤まりません。 この後、休憩室にてしばし酒談義に花を咲かせました。今期の造りのこと、蔵の看板酒である「冬樹」への想い、等々...。 あと、大事なことも相談してきました。今年の夏から温めてきた企画なんですが、来年の春に当館で酒の会をやります!。決まりました!。当日は古関さんも来ます(確定)、サイトウ君も来ます?(オファー中)。 「福乃友の地酒を楽しむ会」ということで開催しますが、当日は地元の佐藤養悦本舗さんより佐藤信光さんにもお越しいただき、福乃友の地酒と稲庭干饂飩のコラボレーションということで皆様に楽しんでいただければと思っています。 福乃友酒造+佐藤養悦本舗という組み合わせ。どちらも秋田の名産ですが、ありそうで無かったコラボレーションではないかと思います。どちらも自信を持って皆様にお勧めできる秋田の逸品です。 今のところは3月の上旬を予定していますが、日時等の詳細が決まりましたら当サイトにて発表いたしますのでもう少々お待ち下さい。
by m_kurabu
| 2008-12-19 16:09
| 蔵元探訪:福乃友酒造
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